シ ジ マ ニ テ ィ

パーソナルスペースが㌔単位のやつ だいたいトモダチ。

6シジマ

工業地帯に流れる川を渡るため、下町を走る

路面電車に乗り、なんとか初見殺しの対岸の

駅に辿り着く。

小雨の降る少しうらびれた通りを歩きながら

初めてライブで聴く事になる坂本美雨さんの

歌と、何度目かのharuka nakamuraのライブ

の事を考え、足取りが軽快だ。

 

突然降り出した雨も、こころもち次第で

美しい雨にもなる。

会場の灯りが、倉庫であったであろう入り口前で

開演迄の時間をつぶす人達の影を揺らしている。

 

haruka nakamuraのライブに集まる人達は、

何だかいつも薄く硬い無地の陶器を思わせる。

 

空間や環境もharuka nakamuraのライブに

参加する人達の為にととのえられ

ここにしか無い祝福がある。

 

艶やかなサックスの音色が、旧倉庫の壁に

震えて反響し内耳や皮膚、骨に甘美な振動を

もたらし思考が遠のく。

 

ピアノ線の上を渡る様に演奏する

haruka nakamuraの「AQUA」。

 

硬い白木を鉋で正確に削る様に、

声音を一音一語繋げて行く美雨さん。

 

どんな顔をして歌っているのだろうと

前の座席をかわして横から見てみたら

身体を椅子の上で前後に揺らし

思った以上に表情を砕きながら

歌われていたので、「ウワッ」と

声がもれそうになった。

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